「パートだから家族手当はもらえないと言われた」「正社員には夏休みがあるのに、パートにはない」「どうしてボーナスに差があるのか、聞いてもいいの?」――そんな疑問を持ったことのあるパートや契約社員の方に関係するルールが、2026年10月1日から変わりました。

パートタイム・有期雇用労働法の施行規則と「同一労働同一賃金ガイドライン」などが改正され、雇い入れのときに「正社員との待遇の違いについて説明を求めることができる」と書面で伝えることが、事業主の義務になりました。あわせて、家族手当・住宅手当・退職手当・夏季冬季休暇など9つの待遇について、どのような差が不合理にあたるのかの考え方が具体的に示されています。

この記事では、パート・有期雇用のルール改正のポイント、9つの待遇ごとの考え方、自分の待遇が適切かを確認する方法、会社に説明を求めるときの手順、事業主が対応すべきこと、相談先までを、働く人と雇う人の両方の目線でわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用のルールが改正された
  • 雇い入れ時(契約更新を含む)に「待遇の違いの説明を求められる」ことを書面で明示するのが義務に。違反は10万円以下の過料
  • 家族手当・住宅手当・退職手当・賞与・夏季冬季休暇など9つの待遇について、不合理な差の考え方が具体化された
  • 働く人は、会社の窓口に待遇差の内容と理由の説明を求めることができる。説明を求めたことを理由とする不利益な扱いは禁止
  • 会社の規模にかかわらず、パートや有期の社員を1人でも雇う事業主が対象
Contents
  1. 2026年10月から何が変わった?改正の3つのポイント
  2. 雇い入れ時に「説明を求められる」ことの明示が義務に
  3. ガイドラインで具体化された9つの待遇
  4. 自分の待遇は適切?確認するための5つのステップ
  5. 会社に待遇差の説明を求めるときの手順
  6. 事業主が対応すべきこと(中小企業・お店向けチェックリスト)
  7. 困ったときの相談先
  8. あわせて知っておきたい:最低賃金と社会保険の変化
  9. ケースで考える:こんなときはどうなる?
  10. パート・契約社員が今すぐできること
  11. パート・有期雇用のルール改正に関するよくある質問
  12. まとめ:まずは労働条件通知書と就業規則の確認から

Contents

2026年10月から何が変わった?改正の3つのポイント

2026年10月からのパート・有期雇用のルール改正の3つのポイント
厚生労働省は2026年4月28日に改正省令と告示を公布し、2026年10月1日から施行しました。改正のポイントは大きく次の3つです。

改正のポイント 内容 位置づけ
① 労働条件の明示 雇い入れ時に「正社員との待遇の違いについて説明を求めることができる」旨を書面などで明示する 新たな義務
② 同一労働同一賃金ガイドライン 家族手当・住宅手当・退職手当など9つの待遇について、不合理な差の考え方を具体化 判断の目安の明確化
③ 雇用管理の指針 公正な評価と昇給、正社員への転換、福利厚生などの望ましい取り組みを具体化 努力目標

「同一労働同一賃金」とは、同じ会社の中で、正社員とパート・有期雇用の社員との間の不合理な待遇差をなくすための考え方です。大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から本格的に適用されています。今回の改正は、そのルールをより具体的で、働く人が使いやすいものにするための見直しといえます。

なぜ今、ルールが見直されたのか

働く人の約4割は、パートや契約社員などの非正規雇用です。同一労働同一賃金のルールが始まってから数年がたちましたが、「待遇の差について説明を求められることを知らない」という人や、手当や休暇の扱いを見直していない会社も少なくありませんでした。また、家族手当や夏季休暇などについては、裁判で不合理と判断された例もあり、考え方を国の指針に反映させる必要がありました。

そこで今回の改正では、雇い入れのときに説明を求められることをはっきり伝えるようにし、あわせて判断の目安となるガイドラインを具体的にしました。働く人が「なぜ?」と聞きやすく、会社が説明しやすい仕組みにすることがねらいです。

対象になるのはどんな人?

対象は、次のような働き方をしている人です。呼び方ではなく、働く時間の長さや契約期間の有無で判断されます。

  • パートタイム労働者:同じ会社の正社員より、1週間の所定労働時間が短い人(「アルバイト」と呼ばれていても含まれます)
  • 有期雇用労働者:契約社員や嘱託社員など、雇用期間に定めがある人(フルタイムでも含まれます)

なお、パートや契約社員として働く人の中には、扶養の範囲内で働くために勤務時間を調整している人も多くいます。時間が短いことは待遇に差をつける理由の一つになり得ますが、時間が短いことだけを理由に、手当や休暇をまったく与えないことが認められるわけではありません。働いた時間に応じた支給を検討することが求められる待遇もあります。

会社側は、規模にかかわらず、パートや有期の社員を1人でも雇っていれば対象です。小さなお店や事務所も例外ではありません。なお、派遣社員には労働者派遣法にもとづく別のルールがあります。

雇い入れ時に「説明を求められる」ことの明示が義務に

パート・有期雇用の雇い入れ時に明示する事項
今回の改正で新たに義務となったのが、労働条件の明示事項の追加です。パートや有期の社員を雇い入れるとき、会社はこれまでも次の4つの事項を文書などで伝える必要がありました。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 雇用管理の改善などに関する相談窓口

2026年10月からは、これに加えて「正社員との待遇の違い(内容と理由)などについて、説明を求めることができる」ことを明示しなければなりません。厚生労働省のモデルの労働条件通知書でも、相談窓口とあわせてこの文言を記載する形が示されています。

契約更新のときも対象

ここでいう「雇い入れ」には、有期契約の更新も含まれます。そのため、10月1日以降に契約を更新する人は、新しい労働条件通知書でこの項目を受け取ることになります。すでに働いている人に一斉に書面を出し直すことまでは求められていませんが、会社が周知することが望ましいとされています。

違反した場合は

明示の義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象になります。過料は刑事罰ではなく行政上の罰ですが、労働局の指導の対象にもなるため、事業主は書式の見直しが欠かせません。

働く人がチェックしたいこと
10月以降に受け取った労働条件通知書や雇用契約書に、「待遇の違いについて説明を求めることができる」という記載と、相談窓口(担当部署や担当者、連絡先)が書かれているか確認しておきましょう。記載がない場合は、会社に確認してみることをおすすめします。

ガイドラインで具体化された9つの待遇

同一労働同一賃金ガイドラインで具体化された9つの待遇
同一労働同一賃金ガイドラインは、どのような待遇差が「不合理」にあたるのかを示す国の指針です。今回の改正では、これまで考え方がはっきりしなかった9つの待遇について、問題となる例・問題とならない例が示されました。

待遇 主な考え方
家族手当 契約更新を繰り返すなど、継続的な勤務が見込まれる有期雇用の人には、正社員と同じように支給する
住宅手当 転居を伴う配置転換が正社員と同じように見込まれる場合は、同じように支給する
退職手当 職務内容や配置転換の範囲が正社員と同じで、長く勤めている人への差は説明が難しくなる
賞与 賞与の目的(業績への貢献など)がパート・有期の人にも当てはまるなら、目的に応じた支給を検討する
無事故手当 正社員と同じ業務をしているなら、同じように支給する
病気休職 継続的な勤務が見込まれる人を、雇用区分だけで一律に対象外にしない
夏季・冬季休暇 正社員と同じ時期に働いている人を、一律に対象外にしない
褒賞 永年勤続表彰など、勤続期間で決まる褒賞は、同じ期間勤めた人にも同じように与える
福利厚生施設 給食施設・休憩室・更衣室などは、雇用形態だけを理由に利用を制限しない

大切なのは、「パートだから」「契約社員だから」という理由だけで差をつけることはできないという点です。差を設ける場合は、仕事の内容や責任の重さ、転勤や配置転換の範囲、勤続の見込みなど、待遇の目的に照らした具体的な理由が必要になります。

基本給や通勤手当はどうなる?

今回あらたに具体化された9つの待遇のほかにも、ガイドラインではこれまでから、基本給・昇給・通勤手当・食事手当・時間外手当などの考え方が示されています。たとえば通勤手当や出張旅費、食事手当は、仕事の内容にかかわらず必要になる費用を補うものなので、パートや有期の人にも正社員と同じように支給することが求められます。基本給は、能力や経験、成果、勤続年数など、何にもとづいて決めているかに応じて、同じ部分には同じ支給、違いがある部分には違いに応じた支給をすることが基本です。

特に影響が大きい「家族手当」と「住宅手当」

家族手当は、扶養する家族がいる社員の生活を支えるための手当です。その目的は、雇用形態にかかわらず、長く働く人には当てはまると考えられます。そのため、契約を何度も更新して長く働いている契約社員などに支給しない場合は、不合理と判断される可能性が高くなります。

住宅手当は、転勤や転居を伴う異動による住居費の負担を補う目的で支給されることが多い手当です。就業規則の上では転勤があることになっていても、実際には正社員も転勤していないような場合は、規程の名目ではなく実態で判断されます。

病気休職・褒賞・福利厚生施設の考え方

病気やけがで働けなくなったときの病気休職は、長く働くことを前提にした制度です。そのため、契約期間に定めのないパートの人には正社員と同じ扱いが求められます。有期契約の人でも、更新が繰り返されて長く働くことが見込まれる場合は、一律に対象外とせず、契約期間などを踏まえて検討する必要があります。

永年勤続表彰などの褒賞は、勤めた期間に報いるものです。契約を更新しながら同じ期間働いてきた人を、雇用区分だけで対象外にすることは問題となります。給食施設・休憩室・更衣室は、法律でもパートや有期の人に利用の機会を与えることが義務とされています。社員食堂の料金の割引などに差がないかも確認しておきたいポイントです。

賞与と退職手当の考え方

賞与や退職手当は、正社員とパートの差が大きくなりやすい待遇です。過去の最高裁判決では、賞与や退職金の差が不合理とまではいえないと判断された例もありますが、今回のガイドラインでは、「正社員の確保のため」といった抽象的な理由だけでは足りないことが示されました。賞与の目的が業績への貢献であれば、パートの人の貢献度に応じた支給を検討することが求められます。

自分の待遇は適切?確認するための5つのステップ

自分の待遇を確認する5つのステップ
「自分の待遇に不合理な差があるのでは」と感じたら、次の手順で確認してみましょう。

  1. 労働条件通知書・雇用契約書を確認する:昇給・賞与・退職手当の有無、手当の内容、相談窓口を確認します
  2. 就業規則・賃金規程を確認する:正社員とパート・有期の社員それぞれの手当や休暇のルールを見比べます。会社には就業規則を周知する義務があります
  3. 自分と比べる正社員を考える:仕事の内容、責任の重さ、転勤や異動の有無が自分に近い正社員を想定します
  4. 違いを書き出す:基本給、賞与、各種手当、休暇、福利厚生などで、どこに差があるかを一覧にします
  5. 会社に説明を求める:疑問のある待遇について、相談窓口に差の内容と理由の説明を求めます
待遇差を判断する3つの視点
待遇の差が不合理かどうかは、主に次の3つの視点で判断されます。
① 職務の内容:仕事の内容と責任の重さ
② 職務の内容・配置の変更の範囲:転勤や異動、昇進の有無や範囲
③ その他の事情:勤続の見込みや、正社員への転換制度の有無など
①が正社員と同じで、②も雇用の全期間を通じて同じと見込まれる場合は、パート・有期であることを理由に待遇を差別的に扱うこと自体が禁止されています。

会社に待遇差の説明を求めるときの手順

会社に待遇差の説明を求める流れ
パートタイム・有期雇用労働法では、働く人が求めた場合、会社は正社員との待遇の違いの内容と理由を説明しなければならないと定められています。これは以前からある義務ですが、今回の改正で「説明を求められること」を雇い入れ時に伝えることになり、より使いやすくなりました。

説明を求める流れ

  1. 窓口を確認する:労働条件通知書に書かれた相談窓口(人事担当者や店長など)を確認します
  2. 聞きたい待遇を決める:「家族手当」「夏季休暇」など、知りたい待遇を具体的にします
  3. 申し出る:口頭でも構いませんが、記録が残るようメールや書面で伝えると安心です
  4. 説明を受ける:会社は、資料を使って口頭で説明するか、説明内容をすべて書いた資料を渡す方法で説明します
  5. 内容を記録する:説明を受けた日時、担当者、説明の内容をメモしておきます

申し出の文例

「お疲れさまです。〇〇店でパート勤務をしている△△です。パートタイム・有期雇用労働法にもとづき、正社員との待遇の違いについて説明をお願いしたく、ご連絡しました。特に、①家族手当、②夏季休暇について、正社員との違いの内容と理由を教えていただけますでしょうか。お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。」

説明を求めても不利益な扱いは禁止

説明を求めたことを理由に、解雇や契約の打ち切り、シフトを減らすなどの不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。説明を求めることは働く人の正当な権利です。とはいえ、職場の関係を考えて不安な場合は、先に外部の相談窓口に相談してから進める方法もあります。

事業主が対応すべきこと(中小企業・お店向けチェックリスト)

パート・有期雇用のルール改正で事業主が対応すべきこと
パートや有期の社員を雇っている事業主は、次の点を確認しておきましょう。小さなお店や事務所でも、基本は同じです。

すぐに対応したいこと

  • 労働条件通知書のひな形を改定する:「正社員との待遇の違いについて説明を求めることができる」旨と、相談窓口(担当者名・連絡先)を記載します。厚生労働省のモデル様式も参考になります
  • 相談窓口を決める:説明の申し出を受ける担当者を決め、対応の流れを共有します
  • 契約更新の書類も切り替える:10月1日以降の契約更新から新しい書式を使います

順次見直したいこと

  • 待遇の一覧表をつくる:正社員とパート・有期の社員で、基本給・賞与・手当・休暇・福利厚生を一覧にします
  • 9つの待遇を点検する:家族手当、住宅手当、退職手当、賞与、無事故手当、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞、福利厚生施設に、雇用区分だけを理由にした差がないか確認します
  • 規程と実態のずれを確認する:就業規則と実際の運用(転勤の有無、契約更新の回数など)が合っているかを確かめます
  • 説明資料を用意する:差がある場合は、その目的と理由を説明できるよう資料にまとめておきます
  • 必要に応じて規程を改定する:見直しが必要な場合は、就業規則や賃金規程を改定し、従業員に周知します

説明資料に入れたい項目

説明を求められたときに慌てないよう、次の項目を整理しておくと安心です。

項目 内容の例
比べる正社員 職務内容が近い正社員の区分(例:店舗スタッフの正社員)
待遇の内容 正社員とパートそれぞれの支給額や支給条件
待遇の目的 その手当や休暇を何のために設けているか
違いの理由 仕事の内容、責任、転勤や異動の範囲などの違い
今後の見通し 正社員への転換制度や昇給の仕組みがあれば、その内容

人手不足が続くなか、パートや契約社員にとって納得感のある待遇は、人材の確保や定着にもつながります。非正規の社員を正社員に転換したり、待遇を改善したりする事業主向けには、国のキャリアアップ助成金などの支援制度もあるため、あわせて確認してみるとよいでしょう。同じく2026年10月から事業主の義務となったカスハラ対策については、カスハラ対策の義務化とは?もあわせてご覧ください。

雇用管理の指針で示された望ましい取り組み

今回の改正では、義務ではないものの、事業主に望ましい取り組みも具体的に示されました。

  • 公正な評価と昇給:仕事の内容や成果、意欲、能力、経験などを公正に評価し、昇給に反映させる
  • 教育訓練の機会:パート・有期の社員にも、仕事に必要な研修などの機会を設ける
  • 正社員への転換:転換制度の内容や実績を明らかにし、ウェブサイトなどで公表することが望ましい
  • 意見を聞く場:話し合いやアンケートなどで、パート・有期の社員の意見を待遇の見直しに生かす

こうした取り組みは、労働局が助言や指導を行う際の参考にもなります。できるところから取り入れていくとよいでしょう。

困ったときの相談先

パート・有期雇用の待遇に関する相談先
会社に説明を求めても納得できない場合や、直接は聞きにくい場合は、外部の窓口に相談できます。

相談先 主な内容
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) パートタイム・有期雇用労働法に関する相談。会社への助言・指導や、紛争解決の援助
紛争解決の援助・調停 労働局長による助言や、第三者の調停委員による調停。無料で利用でき、非公開で行われる
総合労働相談コーナー 各地の労働局や労働基準監督署にあり、労働問題全般を相談できる
社会保険労務士・弁護士 個別の事情に応じた具体的な助言。事業主の規程見直しの相談にも

労働局の援助や調停を求めたことを理由に、会社が解雇などの不利益な扱いをすることも禁止されています。相談するときは、労働条件通知書、就業規則、給与明細、会社とのやりとりの記録などを用意しておくと、話がスムーズに進みます。

あわせて知っておきたい:最低賃金と社会保険の変化

2026年秋は、パートで働く人に関わる変化が重なっています。

  • 最低賃金の引き上げ:全国加重平均は1,177円となり、10月から12月にかけて都道府県ごとに順次発効しています
  • 社会保険の加入条件の見直し:2026年10月から、月額賃金8.8万円以上という条件がなくなりました。週20時間以上働くなどの条件を満たせば、加入の対象になります

時給が上がると、年収が扶養の範囲を超えるかどうかや、社会保険に加入するかどうかにも影響します。待遇の見直しとあわせて、働き方や年収の見通しも確認しておくと安心です。年収の壁については年収の壁2026年最新まとめで詳しく解説しています。

ケースで考える:こんなときはどうなる?

ケースで考える待遇差の判断の目安
ガイドラインの考え方を、身近なケースにあてはめてみましょう。実際の判断は個別の事情によって変わるため、あくまで目安としてご覧ください。

ケース1:契約を5回更新した契約社員に家族手当がない

1年契約を5回更新し、今後も続けて働くことが見込まれる契約社員に、正社員と同じ家族手当が支給されていないケースです。継続的な勤務が見込まれる場合は、正社員と同じように支給することが求められる考え方が示されています。説明を求めてみる価値があるケースといえます。

ケース2:パートには夏季休暇がない

正社員と同じ時期に働いているのに、パートだけ夏季休暇がないケースです。夏季休暇の目的が暑い時期の心身の回復であれば、その目的はパートにも当てはまります。一律に対象外とするのは問題となる可能性があります。勤務日数が少ない場合は、日数に応じた付与を検討する方法もあります。

ケース3:正社員にだけ住宅手当がある

正社員には転居を伴う転勤があり、実際に転勤している人も多い一方、パートには転勤がないケースです。住宅手当が転勤による負担を補う目的であれば、差があっても不合理とはいえない可能性があります。ただし、正社員も実際には転勤していない場合は、判断が変わることがあります。

ケース4:休憩室をパートが使えない

休憩室や更衣室を正社員しか使えないケースです。福利厚生施設のうち、給食施設・休憩室・更衣室は、パートや有期の社員にも利用の機会を与えなければならないと法律で定められています。

ケース5:パートの賞与が「寸志」だけ

正社員には給与の数カ月分の賞与が出る一方、パートは一律数千円の寸志だけというケースです。賞与の目的が会社の業績への貢献に報いることであれば、パートの人も勤務時間や貢献度に応じて業績に貢献しています。目的に照らして説明できない大きな差がある場合は、見直しが求められる可能性があります。

待遇の違いを整理するメモの例

会社に説明を求める前に、次のような表で正社員との違いを整理しておくと、聞きたいことがはっきりします。

待遇 正社員 自分(パート・契約社員) 聞きたいこと
家族手当 月1万円 なし 契約を更新して長く働いていても対象外の理由
夏季休暇 3日 なし 同じ時期に働いているのに付与されない理由
賞与 年2回 寸志のみ 賞与の目的と、差の理由

※金額や日数は説明のための例です。

パート・契約社員が今すぐできること

今回の改正をきっかけに、働く人が今すぐできることをまとめました。

  • 書類をそろえる:労働条件通知書、雇用契約書、給与明細を手元に保管しておきます
  • 就業規則を見せてもらう:休憩室などに置かれていることが多いほか、担当者に頼めば確認できます
  • 気になる待遇をメモする:手当、休暇、賞与、福利厚生など、正社員との違いが気になる点を書き出します
  • 同じ立場の人と情報を共有する:同じ職場のパート仲間と、制度の内容を確認し合うのも一つの方法です
  • 正社員への転換制度を確認する:会社には、正社員への転換を進める措置を講じる義務があります。募集の情報や条件を確認してみましょう

待遇の見直しは、すぐに結果が出るとは限りません。それでも、自分の働き方と待遇を知ることは、これからのキャリアや家計を考える第一歩になります。

パート・有期雇用のルール改正に関するよくある質問

Q. いつから変わったのですか?
A. 2026年10月1日から施行されています。労働条件の明示の追加は、10月1日以降の雇い入れや契約更新から適用されます。

Q. 小さなお店でも対象になりますか?
A. はい。会社の規模にかかわらず、パートや有期の社員を1人でも雇っている事業主が対象です。

Q. アルバイトや学生のアルバイトも対象ですか?
A. はい。正社員より所定労働時間が短い人は、呼び方にかかわらずパートタイム労働者にあたります。

Q. 家族手当は必ずもらえるようになりますか?
A. 自動的に支給されるわけではありません。継続的な勤務が見込まれるかなど、個別の事情によって判断されます。疑問がある場合は、会社に説明を求めてみましょう。

Q. 説明を求めたら、会社に嫌がられませんか?
A. 説明を求めたことを理由に、解雇やシフトの削減など不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。不安な場合は、先に労働局に相談する方法もあります。

Q. 会社の説明に納得できないときは?
A. 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。助言や指導、無料の調停などの制度があります。

Q. 派遣社員も対象ですか?
A. 派遣社員には、労働者派遣法にもとづく別の同一労働同一賃金のルールがあります。派遣元の会社に確認しましょう。

Q. すでに働いている人にも、新しい書面は渡されますか?
A. 一斉に出し直すことまでは義務ではありません。ただし、有期契約の人は10月1日以降の更新時に新しい書面を受け取ります。説明を求める権利は、すでに働いている人にもあります。

Q. 説明は口頭だけでもよいのですか?
A. 資料を使って口頭で説明するか、説明内容をすべて書いた資料を渡す方法で行うことが求められます。資料なしの簡単な口頭説明だけでは不十分とされています。

Q. 正社員になりたい場合はどうすればよいですか?
A. 会社には、正社員の募集情報をパート・有期の社員に知らせるなど、正社員への転換を進める措置を講じる義務があります。転換制度の有無や条件を、会社に確認してみましょう。

Q. 無期雇用に転換したパートも対象ですか?
A. 有期契約から無期契約に転換した人でも、正社員より所定労働時間が短ければパートタイム労働者として対象になります。フルタイムの無期転換社員は対象外ですが、正社員との不合理な差がないよう配慮することが望まれます。

Q. 説明を求めるのに期限はありますか?
A. 期限はありません。働いている間はいつでも説明を求めることができます。疑問を感じたときに、早めに確認することをおすすめします。

Q. 事業主が何もしないとどうなりますか?
A. 労働条件の明示義務に違反した場合は10万円以下の過料の対象になります。また、不合理な待遇差があると、労働局の指導や、裁判で差額の支払いを求められるリスクがあります。

まとめ:まずは労働条件通知書と就業規則の確認から

この記事のまとめ

  • 2026年10月1日から、パート・有期雇用のルールが改正された
  • 雇い入れ時・契約更新時に「待遇差の説明を求められる」ことの明示が義務に
  • 家族手当・住宅手当・退職手当・賞与・夏季冬季休暇など9つの待遇の考え方が具体化された
  • 働く人は会社に説明を求めることができ、それを理由とした不利益な扱いは禁止
  • 事業主は通知書の改定、窓口の設置、待遇の点検と説明資料の準備を
  • 困ったときは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ

今回の改正は、パートや契約社員が自分の待遇について「なぜ?」と聞きやすくするための見直しです。働く人は、まず労働条件通知書と就業規則を確認し、疑問があれば遠慮せずに説明を求めてみてください。事業主にとっても、待遇を点検して説明できるようにしておくことは、働く人の納得感を高め、人材の定着につなげるよい機会になります。

※本記事は2026年10月時点の法令・指針や公表情報にもとづいて作成しています。待遇の差が不合理にあたるかどうかは、個別の事情によって判断されます。具体的な判断や対応については、都道府県労働局や社会保険労務士、弁護士などの専門家にご相談ください。